若手、新興企業への転職18倍
企業と従業員の関係が変化している。
社員は生活の安定と引き換えに、異動や処遇で会社の「支配」を受け入れてきた。だが、若手や中堅が会社に求めるのは安定よりも自分の成長に変わった。転職をスキルの習得できない職場からの「脱出」と位置付け、成長にもタイムパフォーマンス(時間効率)を追求する。
エン・ジャパンの34歳以下を対象とした転職支援サービスでは4〜9月に大手から新興に転じた人が5年前の18倍になった。年齢に関係なく多くな仕事を任され、早く成長できるとして若手が引き寄せられている。
厚生労働省によると、2020年に入社した大企業の大卒社員は3年以内に4人に1人が辞めた。10年前の5人に1人よりも多い。企業は残業時間の削減など職場環境への改善で引き留めようとするが響かない。
自己防衛も強まる。パーソルグループによると。スキルアップなどへの20代の自己投資額は22年に平均約9万8千円と6年前より56%増えた。
大企業も動き始めた。KDDIは20年から仕事の内容で待遇を決める「ジョブ型雇用」を導入した。入社から管理職になるまでの時間を最短8年から2年に縮めた。部下のいる30代前半の管理職は23年に4年前の10倍に増えた。
社員の会社からの遠心力はかつてなく強まっている。少子高齢化で人材不足はさらに深刻化する見込みで、多様な働き手に向き合った上で処遇や育成の横並びから脱し、社員の成長を支援できない企業は存続すらおぼつかなくなる。
(2023年12月5日火曜日 日経新聞より)
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